司馬遼太郎の作品に何か物足りなさを感じた時に、藤沢周平の”用心棒日月抄”と言う作品に出会い、それから彼の作品の虜になった。藤沢は、司馬と違って、歴史上の人物をほとんど書いていない。その作品は、江戸時代の町人物、武士物で、町人、百姓、武士の心理に深く切り込み、独特な味わいを作品にかもし出している。彼の作品は、映画の山田監督が、何本か映画化しているが、山田監督は、こう言っている。「私は、江戸時代の武士、町人百姓が、毎日どんな生活をしていたかどんな資料を見ても良くつかめない。朝、何時に起き、朝食は、何を食べ、城に出仕し何時に帰り、その間昼の食事は、どうしたのか、夜は、何時に食事をしたのか、さっぱり分からない」と。私は、この言葉に唖然とした。小説は、あくまでフィクションであるが、過去の時代の生活様式や思想や習慣、宗教道徳が、如何なるものであるかが、今の時代からほとんどわからないのではないか、作家の想像力のみで描かれているのかと、自分の馬鹿さかげんに気がついた。